HTMLとHTMXの位置づけ
Web開発においてHTMLとHTMXはしばしば比較されますが、その性質はまったく異なります。
HTMLはWebページの構造を定義するための基本的なマークアップ言語であり、テキストや画像、リンク、フォームなどをブラウザ上に表示する「設計図」の役割を担います。つまり、あくまで「静的な土台」を作るための存在です。
一方、HTMXはHTMLを拡張するライブラリであり、既存のHTMLタグに特定の属性を付与するだけで、ページ部分の更新や非同期通信、コンテンツの差し替えといった動的な操作を可能にします。これまでJavaScriptで複雑に書かれていた処理を、直感的でシンプルな形で実装できる点が大きな特徴です。
両者は競合関係ではなく、役割を補い合う関係にあるため、理解して併用することで開発効率を高められます。
なぜHTMXが必要なのか
HTMLだけでは、ユーザー操作に応じてページを更新することはできません。
例えば、ボタンをクリックして別のデータを読み込む、入力内容に応じて結果を即時表示するといった動作は、従来であればJavaScriptを利用してイベント処理やDOM操作を記述する必要がありました。しかし、JavaScriptは自由度が高い反面、初心者にとっては学習コストが高く、コードの管理も煩雑になりやすいという欠点があります。
HTMXはこうした問題を解決するために生まれた仕組みで、hx-get
やhx-post
といった属性をHTMLタグに追加するだけで、Ajax通信や部分レンダリングを実現できます。
つまり、HTMLのシンプルさを保ちながら、ユーザー体験を向上させる動的な要素を容易に取り入れられるのです。これにより、開発者は「最低限のコードで最大限の効果」を得られます。
HTMXがもたらすシンプルさ
具体的な例として「もっと見る」ボタンを考えてみましょう。
通常であれば、JavaScriptでクリックイベントを設定し、サーバーへリクエストを送信し、返却されたデータをDOMに挿入するという一連の流れを実装する必要があります。この作業は数十行のコードになることも珍しくありません。
一方、HTMXを使えば<button hx-get="/more" hx-target="#list">もっと見る</button>
と書くだけで同じ処理が可能です。ボタンをクリックするとサーバーにリクエストが送られ、結果が指定した#list
要素に自動的に挿入されます。
開発者はJavaScriptの詳細を意識せず、HTMLの文脈だけで直感的に挙動を記述できるのです。これは小規模な開発だけでなく、既存のHTMLベースのプロジェクトに動きを加えたい場面でも特に有効です。
両者を組み合わせてこそ活きる
まとめると、HTMLはWebの基本的な構造を担う言語であり、HTMXはその構造に動きを与えるための拡張的なライブラリです。
HTML単体では静的なページしか作れませんが、HTMXを加えることでユーザー操作に応じた柔軟なインタラクションを実現できます。両者の関係を「土台」と「拡張」として捉えると理解しやすいでしょう。
さらに、HTMXを導入することで、JavaScriptへの依存を減らし、開発スピードやコードの可読性を向上させる効果も期待できます。つまり、Web開発においてはHTMLとHTMXを対立させて考えるのではなく、それぞれの強みを生かしながら組み合わせることが重要です。結果として、より効率的でユーザーフレンドリーなWebページを構築できるのです。
ちなみにHTMXはどうやって使う?
HTMXはReactやVueのようなフレームワークではなく、あくまで「軽量なJavaScriptライブラリ」です。そのため、導入方法は非常にシンプルで、npmなどの環境構築が必須ではありません。主に以下の3つの方法があります。
1. CDNから読み込む(もっとも手軽)
HTMLの<head>
や<body>
内に以下の1行を追加するだけで利用できます。
<script src="https://unpkg.com/htmx.org@1.9.10"></script>
これでhx-get
やhx-post
といった属性が使えるようになります。小規模なサイトや試しに導入する場合に便利です。
2. npm経由でインストールする
もしNode.js環境を使っている場合や、ビルドツール(WebpackやViteなど)と一緒に管理したい場合は、npmでインストールできます。
npm install htmx.org
その後、モジュールとして読み込みます。
import 'htmx.org'
これで同様にHTMLタグにhx-*
属性を使えるようになります。
3. ファイルを直接ダウンロードして使う
公式サイト(https://htmx.org/)から`htmx.min.js`をダウンロードして、自分のプロジェクトの`/js`フォルダなどに配置し、以下のように読み込みます。
<script src="/js/htmx.min.js"></script>
ビルド環境を使わずに静的サイトで導入する場合に向いています。
まとめ
「npmでも入れられるけど、必須ではなく、CDNで読み込むのが一番シンプル」という立ち位置です。
大規模開発や他のライブラリと組み合わせたいならnpm、小規模や検証用途ならCDNという選び方が多いです。